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と、白川と明日真が同時に食堂のほうを振り返った。
かすかな足音が聞こえる。誰かが近づいてくるようだ。朱村だろうか。手洗いにでも行って、戻ってきたのかもしれない。
ゆっくりと近づいてくる足音。そして――
「こんなとこでコソコソと何してやがる」
姿を現したのは、佐多だった。
当初から白川の行動に目を光らせていた彼だから、今夜のように不審な行動をとれば即座に反応したとしてもおかしくはなかった。
「さっきは鈴代の部屋にまで入り込んでいたな。何を企んでるんだ?」
案の定、佐多は白川たちの行動を見ていたらしい。
「鈴代の死体が部屋から消えた」
抑えた声で、白川は簡潔に答えた。
「は?」
「僕の想像が正しければ、朱村が持ち出したのだと思う」
「何で朱村が?」
佐多は訳がわからないと言いたげだが、それは明日真も俺も同様だ。白川の妄想とやらがどんなものなのか、いまだ俺たちはわからずにいる。
「あんたが来てくれたのは好都合だ。見たところ、腕っ節は強そうだしな」
「穏やかじゃねえな。何するつもりだ」
「とりあえずは朱村を捜す」
「ここにいないなら、そっちじゃねえのか」
佐多は厨房の脇にあるドアに目をやった。
「たぶん、寝泊りする部屋になってるんだろ」
白川は近づいて行くと、ドアに耳をつけて中の様子を探った。ずいぶんと慎重だ。彼の頭の中では一体、どんな展開が繰り広げられているのだろうか。
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