二日目──罪

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「何も聞こえないな。いないのか……」  白川の手がノブに伸びる。鍵はかかっておらず、ドアは薄く開いた。  佐多の予想通り、この部屋で朱村は寝泊りしているらしい。簡易式のベッドがスペースのほとんどを()めた狭い部屋だった。   明かりはついているが、朱村の姿はない。身を隠す場所も、遺体を隠す場所もないのは一目瞭然だった。 「コンロに鍋をそのままにして、朱村さんはどこへ行っちゃったんだ?」  厨房に戻ると、不思議そうに明日真は言った。 「調理中だっていうなら、そう遠くには行ってねえはずだ。裏口も見てみるか」 「裏口?」と白川は眉をひそめる。 「ああ。そっちの奥にあるはずだぜ。酒の席がお開きになった後、煙草を吸いに外へ出てな。そん時に見つけた。雨がやんでたから、ついでに建物の周りをぐるっと一周してみたんだ」 「ということは、朱村は食堂に誰かがいる時でも、気づかれず厨房から外に出ることができたというわけか……」  それならば鈴代を岬から突き落とすことも可能だったと白川は考えているのだろうか。 「何をぶつぶつ言ってんだ?」 「いや。早いところ朱村を見つけるぞ」  そう言うと白川は、厨房にあった包丁を一本手に取った。「おい」と声を重ねた佐多と明日真を無視して、足早に裏口へ向かう。  彼の思考が読めないままに、俺はついて行くしかない。
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