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言い表せそうにない。
整理がつかないまま語り出していた。
「叔母様ともうまくいかないし、ムシャクシャしてしまったの。エミリーのことで言い争いになったの。叔母様は薄情な人だと思って、わたしは拗ねたわ。もちろん、わたしも悪いのよ。でも、叔母様に対して、わたしも不満はあるの」
常々、胸に落とし込んでいた不満をポツンと告げていく。
「いつもいつも、叔母様は軽薄だわ。叔父様が可哀想よ、やましいことをしていなくても町では悪い噂は立っているのよ。わたし、子供の頃に軽薄な叔母のせいで馬鹿にされたこともあるのよ」
「何て事を言うんだ。君の叔母さんは愛する夫のことしか考えていなよ」
「な、なぜ、そう言い切れるの?」
問いかけると、彼は優しい目で答えた。
「海軍の兵士経由で叔母さんに手紙を届けている。ダントンは大佐の知り合いだ。そのことを知っているからこそ便宜をはかってきた。彼女は夫から届く手紙を心の拠り所にしていたんだよ」
王都からの郵便は月に一度だけ。叔母はそれでは満足出来ない。
「セントマリーは電気ケーブルというものが通っていないだろう。だから、電報も届かない。手紙だけが連絡手段なんだ。海軍の巡視艇が入港する頻度は定期便の倍だから、より綿密に手紙のやりとりが出来る」
「知らなかったわ……」
海風が私の髪を乱している。薄い綿の青いドレスの裾がブワッと膨らみ風が吹き抜けていく。
「本当は、ルイーザはダントンと共に過ごしたいんだよ。夫と共に世界中を駆け回りたいんだよ」
「わたしのせいで寂しい思いをしていたのね……。本当に申し訳ないわ。ダントンは本当に愉快な人なのよ」
「知ってるよ」
ダントン印のビスケットは未開封なら二年間は保存可能という優れもの。
『食べ終えた缶を拾った遊牧民の人がプランター代わりに使っているんだよ』と、叔父がとても嬉しそうに自慢していた事がある。
《ダントン印のビスケットは世界を駆け巡る。食べ終えた後も皆の役に立つ》
そんな広告が雑誌を飾っていたわ。
ちなみに、叔母は、ビスケットの缶をお裁縫箱として使っている。
「叔母さんは君を娘のように思って愛しておられる。だから哀しませるな」
「そうですね」
目を伏せていると、彼がボサッと呟いた。
「君の従姉のコレットの事だけど……。正直言うと、彼女と結婚するつもりはなかつたんだ」
「どうして!」
「会ったこともない相手だよ。だけど、彼女が病気だと聞いていたから、断ることもできなかった。あの当時のオレは仕事のことで頭が一杯だったんだ」
「そんな事、コレットが知ったら悲しむわ」
「ああ、そうだね。でも、いずれ断るつもりでいたんだよ。だけど、その前に彼女は亡くなったしまったんだ。ねぇ、コレットは、どんな人だったの?」
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