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恋の相談? 2
それでも「何も思い浮かばない」とでも言おうものなら鉄拳が飛んでくるだろうし、必死に考えるフリをしたが、これがなかなか難しい。
「あんた、ちゃんと考えてるか?」
どうやらおやぶんは僕の頭の中が見えるようで、これが噂に聞く”女の勘”というやつだろうか。男が最も恐れる神通力のひとつであるらしいが、おやぶんに発揮されるとなんだか心臓を握られているようで恐ろしい。
「か、考えてるよ」
「言っとくけど、愛美はうちの親友やから」
命を懸けて考えろということらしい。
「ほら、はよ出せ」
アイデアのカツアゲである。そのうち、「ちょっと頭振ってみろ」とでも言われそうだ。
「アイデア出せ言われてそんなもん、ぽっと出るかいな」
ささやかな反抗であったが、おやぶん自身何も思いついていないからか、特に何を言われるわけでもなく、ふたりでうんうん唸ることになった。
「知恵出せ言われてもな、実は俺らもよう似た問題で悩んでるんやわ」
「なんやそれ」
「彼女欲しい、いうやつや」
「おうおう、高校入ってからあんたらも成長したやないか」
正月にしか会わない親戚のおっさんみたいだ。
「昔は人間の女性とチンパンジーのメスの区別も微妙やったのになあ」
「思春期いうやつや」
「遅ないか?」
「俺らも高校生やいうことや。中学の頃と同じ青春は過ごされへん」
「あんたらが青春って!」
おやぶんが爆笑した。
「そない笑うなや。女子の青春と男子の青春は違うんや」
「ああ、しんど。まあええわ。で、何してんねん」
僕は現状を説明した。高校の屋上に集まってはミーティングを開いていること、目標は夏休みの浴衣デートであること、日夜研究を怠らないこと。おやぶんはずっと爆笑しながら聞いていた。
「あんたら、相変わらずおもろいことやってんなあ。よっしゃ、いっぺんそれに参加したるわ」
「なんか怖いな」
「いやいや、アホ男子だけが集まって話し合っても何も生まれへんやろ。女子の意見がどれほど大事か、知らしめたるわ」
完全に「どっちが強いか知らしめたるわ」のニュアンスだったし、おやぶんが”女子”かというと違う気がするが、言っていることに間違いはないし、そもそもやる気になったおやぶんにノーを突きつける勇気もないから承諾するしかなかった。
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