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はじめての・・・合コン! 1
合コンというものに自分が参加する日が来るとは思わなかった。そんなものは都市伝説のようなものだと思っていた。僕の友達付き合いでは参加したという話も聞かないから、もはや神話であった。それによもや自分が参加することになろうとは。しかも、明日。
ユニバーサル・ワールドには実は行ったことがないが、噂には聞いている。金田の説明によると「もはやファンタジー」だそうだ。よく分からないので真木に解説してもらうと、ユニバーサル・ワールドは西日本最大のテーマパークだ。メインはハリウッド映画をテーマにしたトラクションで、再現度の高さはまるで自分が映画の登場人物にでもなったかのようだということだ。最近は日本独自の世界観を出すために邦画をテーマとしたものも登場している。今話題を呼んでいるお化け屋敷がそれで、批判覚悟の怖さというのは伊達ではないらしい。
そしてなにより大事なのは、ユニバーサル・ワールドは今日本で一番人気のあるデートスポットだということだ。派手でスペクタクルなアトラクションと煌びやかなパレード。これらを見た男女はかなりの確立で結ばれるのだという。そのため、東京や福岡、北海道あたりから泊りがけでやってくる人も後を絶たないのだそうだ。ここで結ばれることができれば、僕たちは目標である浴衣デートを現実のものとできる。
新しい出逢い。恋に落ちるふたり。そう、夏は恋の季節だ。僕は彼女と手をつないで夏祭りの夜店を見て回る。水色の浴衣が似合う彼女ははしゃぎながら、僕の手を引っ張りながら早足に店から店へと移動する。僕は彼女が掬った金魚が入ったビニール袋をぶら下げて後をついて行く。手を繋いだ彼女の背中を追うこの時間は、なによりも幸せな瞬間だ。
やがて祭りも終わり、僕は彼女を家まで送っていく。気を使うだろうからもちろん家には入らない。玄関先までだ。田舎なので夜道の危険といえば溝と虫くらいのものだが、それでも僕の手を握る彼女の手に力が入る。
家が近付くに連れ、彼女の歩幅は小さく、歩調は緩やかになる。やがて彼女の家が見えてくると、彼女はそっと立ち止まって僕の手を引く。
「今日はありがとう。凄く、楽しかった」
そう呟いた彼女の顔がゆっくりと近付き、僕はそっと彼女の頬に手を触れ・・・・・・。
うおおおぉぉーーーぅ!!
僕は思わず咆哮を上げた。
このシミュレーションをシミュレーションで終わらすまい。固く心に誓ったその時、僕のスマホが鳴った。おやぶんからだ。
「明日のことやねんけどな」
「おう、楽しみやな。俺、実はユニバーサル・ワールド初めてやねん」
「・・・・・・。あんた、目的はき違えてないか」
「いや、な、何を言うてんねん。頑張るよ」
目的って何だっけか?彼女との出逢いじゃなかったっけか?何のことかよく分からないけれど、とりあえず当たり障りのない言葉で返答した。
「あんた、忘れてるやろ」
「何言うてんねん。覚えてるわ。覚えすぎて逆に忘れそうやわ」
「何やそれ」
「もし忘れたら林田のせいやで」
「覚えすぎて忘れるんやったら、あんたに責任あるやろ」
一瞬沈黙があったが、「まあ、ええわ」とおやぶんが言った。
「覚えすぎて忘れてるやろうからもう一回言うけど、愛美はうちの親友やからな。例えば何かでおもいきり頭ぶつけたとして、それで自分の名前と住所忘れても、それだけは覚えときや」
「お、おうともよ」
忘れていた。
危なかった。高校生活始まって以来最大の危機であった。愛美ちゃんのことなどすっかり忘れて、自分にも出逢いがある、ひょっとしたら彼女ができるかもしれないと、シミュレーションに勤しんでいた。しかし、そんなことを言っては明日のユニバーサル・ワールド行きは中止、僕ら四人の行き先がテーマパークからメモリアルパークに変わる。
「西田と、その愛美ちゃんひっつけたらええんやろ?」
「ひっつけるて、品のない言い方しよるなあ」
おやぶんが品のない言い方で言い放った。
「ええか、愛美はシャイなコや。愛美が西田と仲良くなれるよう、自然に後押しせなあかんのや」
「なんや、難しそうやなあ」
「ええか、さりげなくや。さりげなく。例えば、なんか乗り物乗るにしても隣同士が望ましい。せやけど無理やり隣同士にしたらやっぱり怪しい。西田はともかく、愛美は敏感なコやからおかしいてバレる。そうなったら上手くいくもんもいかんようなる」
「なんや、面倒な話やなあ」
「愛美がうちの親友なんは、もう言うたな?」
面倒くさがっては命がない、ということか。
「そっちはどうやねん。明日来る人ら、俺は知らんけど、そっちは協力してくれるんか?」
「おう、こっちはしっかり根回し出来とるわ」
「なんや。らしくないなあ」
「何がや」
「林田が根回しって。いつも猪突猛進を地で行ってるのに」
「人を何やと思ってんねん」
そんなもんだぞ、おやぶんは。
「まあ、とにかく、自然に行かなあかんねん」
「それ言うために電話してきたんか」
「おう、くぎ刺しとかな下手こきよる思ってな」
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