フーとウー

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 フーの幼少期の記憶、学童期の記憶、青年期の記憶、それらは全て……「喪失」状態であるとした。  カタカタと機械を操作しながら、つむじは一人で頭を働かせている。  仕事が、いっぱいある。  まずは結婚だ。四番目のフーも全く同じつくりではあるが、ちょっとした違いにハヤテが気づいてしまわないだろうか。先に四番目のフーであることを、明かしてしまった方がいいだろうか。いや、フーが四人いることは、城の者しか知らないことだ。みだりに話すべきではない。うまく立ち回らなくてはならない。  それから、あの塔だ。最上階は血まみれで、牢屋番の死体が転がっている。門番を金で釣って片付けさせようか。いや、あのような浅ましい男は、あとで何を言ってくるか分からない。もっとましな男を使おう。  ウーはどうしよう。フーの護衛だけを向かわせはしたが、簡単に見つかるだろうか。  そして、三番目のフーだ。新しいフーができた段階で、古いフーの人生は一種のバグになる。「実在しない人生」は矛盾しているから、本来ならば抹殺しなければならない。  あの時、完膚なきまでに撃ち殺すべきだった。  ……いや。
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