フーとウー

1/43
15人が本棚に入れています
本棚に追加
/43ページ
 となりあう国に限って、うまくいかないことは多いものである。  風の国と雨の国も然りであった。顔つき体つき、着るもの食べるもの全部一緒なのに、二つの国は何かというとぶつかり合っていた。  となりあう国どうしである、もちろん最初はそんなことなかったかも分からない。どこでそうなってしまったのか、大体このあたりのもめごとで、ぐらいのことしか、今を生きる人には分からない。けれど親が、祖父母が、祖先が嫌っていることなので、とりあえず嫌っている。お互い、相手の国を一旦疑うことにしている。  よくないことだが、よくあることである。  風の国の王の一人娘、フーもそうであった。風の国では、後継者の名前をフーとつけることにしている。  フーには姉が二人いた。けれど二人のフーは、この国から出て行ってしまった。だからフーは、三人目のフーになった。  風の国は、その名のとおり風に守られた国であった。  強い風のエネルギーは暮らしを守り、弱い風の愛撫は、疲れた心を癒した。またその逆もあった。風の吹き方で、人々は明日を占い、幸せを祈った。
/43ページ

最初のコメントを投稿しよう!