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そもそも、なぜウーはフーを殺そうとしているのだろうか。
ウーは、殺し屋なのだろうか。
でも、とてもそうは思えなかった。
あの金色に光る瞳。
とても、そうには。
ウーは一体何者なのだろう。
何を食べるのだろうか。
何を見て笑うのだろうか。
今、暗やみを見つめて、何を思っているのだろうか。
フーは、ウーのことを思っている。今夜も。
ウーは、フーのことを思っているだろうか。
フーのことを、まだ殺したいと、思っているだろうか。
死ぬってどんなだろうか。
殺されるって、どんなだろうか。
憎まれながら、ざまあみろと笑われながら死んでいくって、どんなだろうか。
憎しみ。フーの人生で、これほど縁遠い感情もなかった。三番目のフーとして国中の祝福を受けながら生を受け、じゅうぶんすぎるほど愛されて育ってきたのだ。なぜ人間の心に憎しみが生じるのか、分からなかった。憎しみは、悲しい。憎しみは人を化け物にする。憎しみこそが、悲劇のインスピレーションである。
真夜中、フーは音も立てずに起き上がった。つい立ての奥をのぞき込むと、侍女のつむじは寝息を立てて眠り込んでいる。
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