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「お願い」
「いや、でも、この塔は城に悪さを働いた奴を閉じ込めているところでして、あなた様のようなお方には、よろしくないところかと……」
「いいから。お願い」
「でも」
「お願い」
言って、フーは門番の手を握った。手を離すと門番の手に、金貨が残った。門番はこれだけでひと月は暮らせる。門番は一瞬で全てを理解した。そして何も言わずに、塔の門を開けたのだった。
フーは明かりをかざして、ゆっくりと塔の中に入っていった。
細いらせん階段を、ひと足ひと足上っていく。
この塔はもともと外敵から身を守るための見張り塔であった。だから、部屋のようなものは一番上にしかない。そのうち一つが牢屋番のもので、もう一つが牢屋であるはずだった。そこに、ウーはいる。
階段を上り切って、フーは明かりをかざした。
牢屋番は眠りこけていた。門番と同じように耳元で何かささやいても、びくともしない。この者には、金貨を握らせる必要はないようである。
フーは振り返って、明かりをかざした。
狭い牢屋が一つだけあって、そこに、ウーがいたのだった。
ウーは目を見開いて、フーを見上げていた。
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