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ある時、フーは侍女のつむじから、雨の国の話を聞いた。つむじは、姉のフーについて雨の国に行ったことがあるのだという。
その時は、二番目のフーだった。一番目の姉のフーがなかなか帰ってこない、もしかしたら雨の国の人間にそそのかされて、いわゆる亡命をしたのではないかと、そんな話を聞いたからだ。
二番目のフーは、王になどなりたくなかった。季節風のように気まぐれに、自由気ままに生きたかった。
だからもしも一番目のフーが生きてどこかにいるのなら、連れ戻さなければならなかった。
それで、うわさを信じて雨の国へ旅立ったのだ。
二番目のフーが出会ったのは、一番目のフーではなく雨の国の王子であった。
名をレインといったそうだ。つむじによると、風の国にはいそうでいない、でも海の向こうの絵物語になら出てきそうな、つまり異次元の美しさが備わった王子なのだということだった。
「私の、王子様よりも?」
「ハヤテ様でございますか? ええ、ここだけの話、つむじには雨の国の王子様の方が、タイプでございました」
「……そう」
二人は顔を見合わせた。
「それは、ここだけの話にしないとね」
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