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つむじは忙しく侍女たちと話をしながら、ばたばたと部屋を動き回ったり、書きつけたメモを眺めたりしていた。
「急に決まったことなので、少々異例ですが婚礼は今夜執り行われます。さ、お召しになってください。サイズを調整しなければいけないとなると、またスケジュールが変わってきますので」
「待って」
言ったが、つむじは待ってはくれなさそうだった。
「……ハヤテ様が、急いでいるの?」
「……いえ」
つむじの目には、いつもと違う光があった。
「王の仰せです。雨の国から男が入ったことで、危機感を抱いておられるようです」
つむじは小さな瞳で、言外の意味を的確にフーに知らせた。
「……私、これからどうなるの」
「フー様、今日は婚礼の儀だけでございます。形だけ。ハヤテ様は今夜よりこの城にお住まいになられますが、夫婦として共に暮らすのは、もう少し先になりますから、ゆっくりと心の準備を整えていけばいいのです」
「つむじは? つむじは、どうなるの」
「あら、ふふ。私は、いつまでもフー様のおそばにお仕えいたします、そんなことを心配していただけるなんて。うれしい」
「……つむじ」
私。私ね。
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