フーとウー

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 言いながらフーは、カーテンが優しく揺れる先の、四角い夜空を眺めていた。その夜空は、ハヤテの住む宮殿にも、雨の国にもつながっていた。  フーとハヤテが婚約関係であることは、すでに世に知れ渡っていることだった。だから、公のパーティなどでも、フーとハヤテは隣の席をあてがわれた。  フーとハヤテは、時々お互いの様子を探りながら、いくつかの会話を交わした。  一緒にいて、ハヤテは楽しい人だった。今日もフーを笑わせるいくつかの話を用意していて、グラスが空になったらすぐに人を呼んで注がせた。服装や髪型も撫でまわすようにほめてくれ、フーは舞い上がる一方だった。  けれど、そんな人柄だけあって、ハヤテのもとには何人もの人が集まってきた。フーの知らない人ばかりだ。しかし、相手はフーのことを知っている。親しげに何人も何人も、話しかけてくる。そうしたことは、フーは風の国の王女なので、当たり前のことである。けれどフーは、ひどく緊張した。  それなのに、そのような人たちとフーの知らない話を少しばかりした後、ハヤテは決まってフーを将来の妻だと言ってわざわざ紹介した。何人かは相手も妻を連れていて、お互いのパートナーを、まるで散歩中の犬愛好家のように紹介しあうのだった。
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