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そうして昨夜と同じように、ウーはフーの手を取り、唇を近づけた。
「……やめて」
フーは無理矢理手を引っこめた。
「……申し訳ありません。これが、作法でございまして。雨の国では」
「違うでしょう。そちらの手にあるものを、見せてごらんなさい」
ウーは沈黙のあと、ゆっくりと手にしていた短剣を差し出した。
「……どういうつもりですか」
「あなたの命を、奪いに来ました」
「貸しなさい」
ウーは従順に短剣をフーに預けた。裏切ることを、知らないのかもしれない。しかも短剣は笑ってしまうくらい短くて、ぜいたくな装飾にポキッと折れてしまいそうだった。
これで一国の王女を刺そうというのか。
なんて愚かなことだろうか。
「誰か。この者を捕えよ」
大声で怒鳴ると一瞬で護衛の者が駆けつけて、ウーは捕らえられた。
ウーは、城のはずれにある赤い塔の牢屋に閉じ込められた。
ウーは一番上の牢屋にいる。薄汚れたウーの塔は、フーの部屋からその先端を見ることができた。
あそこに、ウーがいる。
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