0人が本棚に入れています
本棚に追加
/3ページ
彼女とゴキジェット
深夜3時頃、コンビニでバイトをしていると
20代前半くらいの女性が、神妙な面持ちで入店してきた。
彼女は入り口近くに置いてあったゴキジェットを手に取ると
他の商品には目もくれず、レジまで一直線に歩いてきた。
彼女は一言、
「お願いします」
とだけ言い、ゴキジェットをレジの上に置いた。
彼女は握りしめていた千円札を差し出し、
364円のお釣りを受け取ると、
「ありがとうございます」
と言い、店を後にした。
店を出る時の彼女の後ろ姿は、
まるで戦場に赴くような、
20回以上挑んでも倒せないでいるボスに挑戦しに行くような
何か覚悟を決めたのだろう、とても堂々としていた。
入店してきたときの彼女とは、もはや別人だった。
僕は一人になった店内で、
「頑張れ」
と、一言そう呟いた。
最初のコメントを投稿しよう!