われら押入れ探検隊

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われら押入れ探検隊

夫 えー、我々は押入れ探検隊である!   ただいまより、我が家の無法と混沌の温床である、   押入れの中身の廃棄処分、および清掃と整理を執り行う! 妻 イエッサー! 夫 隊員一号よ、なんでこんな時期に、我々が大掃除をしているかわかるか。 妻 はい。それは、わたくしめが年末の大掃除をさぼったまま   放置したからであります。 夫 あのなぁ「うっかり数週間経っちゃいました!てへぺろ」的な   空気出してるが、隊員一号が実際に放置した年月はどのくらいだ?   答えろ。 妻 軽く見積もって、ざっと三年は経過しております! 夫 三年…って…押入れはタイムカプセルではない! 妻 イエッサー。押入れはタイムカプセルじゃないであります! 夫 うむ、わかればよろしい。   妻 …しかし、隊長? 夫 ん?なんだ、隊員一号。 妻 逆にいっそのこと、むやみに掘り起こさずに、   次の年末までそっとしておく、というのはいかがでしょうか。   これまでもすでに三年も放置していたのですから、   あと数ヶ月くらい先延ばしにしても、問題ないかと! 夫 ちがぁぁぁぁぁぁう!   そう言って何ヵ月も現実から目をそらしてきたせいで、   俺が普段からどれだけ不利益を被っていると思っているんだ。 妻 ひぇ…! 夫 そもそも、今日まで押入れの大掃除ができなかったのも、   年末に食べさせられた「冷蔵庫一掃・特製闇カレー」が原因だ。 妻 隊長、お言葉ですが、それは事実無根の濡れ衣であります!   あのカレーでお腹を壊したのは、隊長だけ。   私は元気はつらつ☆寝正月を満喫したであります! 夫 えぇい、黙れ。   こうなったら徹底的に、押入れを整理してやる。俺に続け! 妻 イエッサー! 夫 まずは、押入れの中の物を全部出して、不用品の検分を行う。 妻 イエッサー! 夫 うん…これは、隊員一号の服か?   見慣れないものも多いようだが…。 妻 それは通販で失敗して、袖を通すこともないまま放置された、   捨てるに捨てれない服たちであります! 夫 うわー…これなんか新品同様だし、こっちは可愛いのに…   捨てるには流石にもったいないな。   全然、着れてないのか? 妻 キレてないっすよ(モノマネ)。 夫 え? 妻 全然キレてないっすよ(モノマネ)。 夫 あー、せっかくのモノマネだが、   これはリサイクルショップ行きだな。 妻 イエッサー。 夫 次は…うわっ、なんだこれは…? 妻 えー、右手に見えますのは、   突っ張りきれずに、落下した突っ張り棒。   奥には畳まれたままの組み立てボックス。   そして空気圧縮タイプの収納袋も各サイズ充実のラインナップ!   …圧縮されず無駄にかさばっておりますが。 夫 おい、なんで収納グッズがこんなにあるのに、全く活用されず、   押入れに眠ってるどころか爆睡かましてるんだ! 妻 これでわたくしめも収納美人に!   夢にみたシンデレラフィット。 夫 どう見ても、寝落ちしたまま起きてこない三年寝太郎だろうよ。 妻 …いつか王子様が? 夫 そろそろ目を覚ませ。片づけを人任せにするんじゃない。 妻 イエッサー! 夫 ん、なんだこの奥に入ってる箱は。結構重いな。 妻 はい。それは、タイムカプセルであります。 夫 タイムカプセルぅ?   冗談のつもりだったのに、本当に押入れに隠してたのか。 妻 はい。それは今年の夏に採取したやつです。   生ロシアン・タイムカプセルなので。 夫 生…ロシアン…?   いったいなんだそれは。   非常に嫌な予感しかしないぞ、隊員一号! 妻 地中から適当に採取したので、いつ羽化するかは、運次第!   なにが生まれてくるのかお楽しみ! 夫 中身、幼虫かよ!   だめだ、元の場所に埋めて戻してこい。 妻 イエッサー…。 夫 ふぅ。押入れの整理もだいぶ進んできたな。   ここまで、いつ使うのかわからない大量の紙袋をはじめ、   壊れた電化製品、開かずの段ボール箱など、   不用品の数々を廃棄してきたわけだが…。 妻 隊長ご確認ください、奥から大量の手紙が発掘されました。   なんと、こちら全て、私宛へのラブレターなのであります。 夫 はぁ? 妻 「君は僕の愛する人だ。僕の一部なんだ。    君がいなければ、そうだね、鼻のない僕みたいなものかな?    鼻がなければ美しい花の香りも嗅げない、ご飯の味もしない、    僕の見てくれだって不格好になる。    足りないものが多すぎる僕に、君は大事なパーツを、    僕の「中心」へ与えてくれる存在なんだ…」 夫 あっはっは。なんだその恥ずかしい文面は…!   なんでチョイスするのが、瞳とか唇じゃなく、鼻なんだよ。   ラブレターらしく、もっと相応の表現があるだろう。   いかにもモテないヤツが書きそうな文章だな。 妻 サー!イエッサー。差出人は、隊長であります。 夫 うぉい!処分だ処分! 妻 これは私にとっても「大事なパーツ」ゆえ、   処分には同意できかねるであります! 夫 もう記憶ごと、全部抹消してくれ。   やめて。お願い、頼むから、隊員一号おぉぉぉぉお!   
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