第一章〜光希

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第一章〜光希

 それでね、去年の六月にとうとう精神科に入院したの。いや、させられたの。  あんまり鬱がひどくて、このままじゃマジで自殺しちゃうよ、ってなって。  まだ五歳の幼稚園児いるのに、旦那はコロナのせいで逆に忙しくなっちゃって、家事も育児も手伝ってもらえないしさあ。それなのに、毎日毎日子どもと二人きりで家にいろって。外に出たら厄介な病気が流行ってるんだからって。  幼稚園いつ再開するかわかんないなんて拷問だよね、子どもも親も。  で、精神科受診したら、「あー、いわゆる抑うつ状態です。診断書書きますから、お薬飲んで家で寝てなさい」って、お医者さんに言われて。 「いや、ここんとこずっと家で寝てるだけです」って返事したら、「そうですか。でもそれではお困りでしょう、小さいお子さんいらっしゃるんですよね」とか言われて。  たしかに困ってると言えば困ってるんだけど、別に狭いマンションだし、そんなに掃除しなくても汚れるわけじゃなし。洗濯機さえ回しておいたら、旦那が帰ってきて適当に、そこから着替えは出してくれるしさ。 「ご飯は?」またまた聞かれて、 「今はウーバーとコンビニ頼みです。旦那は忙しくて、コロナなのにほぼ毎日出社して、会社で弁当買って食べてから帰って来てます」って言ったの。 「大人はそれでいいけど、お子さんはそれじゃ困るでしょ?」って、お医者さんは、また畳みかけるように言うわけ。 「はあ」って言うと、「はあって……。ご実家とか頼れないんですか?」呆れたように、相当こっちの事情に踏み込んでくるんで、なんか頭に来たよ。
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