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「お天道様も淡泊なもんだ。空の真ん中でカッと燃えてるだけで、陸(おか)の上の水を巡らせたり、雲を動かしたりできちまうんだろ?ついでに作物実らして『ああ、ありがたや』なんて担ぎ上げられるわりに、人間の殺し合いにゃ、まるで高みの見物決め込んでんだもんよ」
イサカがつぶやく。特に深い考えもなく、乾いた口糧を口からこぼすような、ポロッとした言い分だった。
一方の俺も、ア型の安全子をいじりながら空返事をする。
こんなやり取りはなにも今日に始まったことじゃない。とっくの昔から、俺たちが戦友の死に対して無関心になったその時から日課のように続いている。きっと戦争が終わらない限り、俺たちの孫の代まで、こうして二人して語らうことだろう。
少し瞼が重くなってきた。俺はその場で横になる。俺がこうしている間はイサカが周りを警戒してくれるので、交代しながら休憩をとる。
夢見心地になってくると、瞼の裏をスクリーンにして昔見た景色が浮かんできた。
俺の家では農業をやっていた。上の兄弟たちが兵役に出ている間、よく親父に連れられて森沿いの農道を三輪トラックに揺られて行ったものだ。
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