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魔王様の城にいると、時折歌が聞こえた。魔王様の歌だ。彼の歌は強力な魔法だ――魔物たちにとっては守護と鼓舞。人間たちにとっては恐怖と攻撃。
俺の前であまり喋らないのは、そのせいなんだろう。声に力があるから。
なんとかして魔王様を救えないだろうか。何度も考えたけれど、いつも結論は同じ。
だめだ。俺には無理。
俺はなんにもできない。魔法も使えなければ、剣を持つこともできない。最初からずっと弱くて、魔王様がいなければ生き延びることさえできなかった。せっかく魔王様に生かしてもらって魔物になっても、なんの力もないみたい。
部屋には魔法がかかっていた。俺を守るために、魔王様がかけた魔法だ。彼以外の誰もここへ入れない代わりに、俺も外へ出られない。
煙が近づいてくる。外の魔物たちが城に逃げてくる。色濃い敗北の気配に、城内は騒然としている。
あまりにも無力で、俺は泣いていた。同じ城にいるのに、魔王様はここへはほとんど来なくなった。寝る間も惜しんで魔物たちのために働いているんだろう。
でも、近づいてくる。近づいてくるんだ。
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