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また、高齢というわけではないのですが、その髪は見事な銀の色をしていて、やや長く感じるくらいのおかっぱ頭です。
その下に覗く顔も綺麗な真っ白い肌をしており、目は切れ長、鼻筋も通り、紅を差した唇だけがなんとも妖艶な、控えめに言っても大変な美人の類です。
彼女を見た瞬間、僕は驚きや恐怖というような感情ではなく、いわば畏敬の念とでも呼べるような、そんな畏れに近い感覚を抱きました。
「………………」
そして、隠れるでも逃げるでもなく、僕は御簾を上げた姿でその場に固まったまま、しばしその白い服の女性に魅入ってしまっていました。
「……?」
そうして呆然と突っ立っていると、女性は衣擦れの音もなく静かに右腕を上げ、やはり真っ白いその手のひらで僕をゆっくりと手招きします。
……入れってことかな?
そう思って御簾を潜り、恐る恐る僕は広間の中央辺りまで進みました。
すると、今度はその女性、手招きしていた手をくるりと返し、手のひらを上に前へ突き出すようにして僕に見せます。
どうやら、そこへ座れと言っているような様子です。
「し、失礼します……」
彼女に操られている感もなくはないのですが、どうにも断る気にもなれず、僕は言われるがままに、そこへちょこんと正座して座りました。
座ってから、ふと視線を上げて女性の顔を見ると、彼女はその切れ長の目をさらに細め、白い口元になんとも穏やかな微笑みを湛えてじっとこちらを眺めています。
「………………」
その笑顔にも思わず黙って見惚れていると、特に根拠があるわけでもないのですが、不思議と僕には「雨宿りをしていきなさい」と、そう彼女が言っているように感じられました。
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