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「――おい! 起きろ! こんな所で寝とると風邪ひくぞ!」
「……ん、んん……」
次に目を覚ますと、僕の前には祖父がいて、僕の肩を掴んで揺すり起こしていました。
「……おじいちゃん……ここ、どこだ? ……僕は、いったい……?」
「ここは弁天様の祠じゃ。なかなか帰ってこないんで心配して探しに来たんじゃよ」
朦朧とした頭で呟いた僕の疑問に、ホッと安堵した顔で僕を見つめる祖父はそう答えます。
その言葉に周りを見回すと、僕は林の中の道の傍にある、弁天様――弁財天の祠の覆屋の中で蹲っていました。
その祠自体は1mもない高さの小さな石造りのものなのですが、その上には木造の覆屋が建てられていて、子供ぐらいの大きさなら余裕でその中に入っていられるんです。
祠の中から祖父の肩越しに空を見上げると、日はすでに沈みかけ、紫と橙が混ざり合ったようなグラデーションの色をしています。
僕は、なんでこんな所で寝ていたんだろう?
確か、夕立にあって、どこか雨宿りできる場所を探していたらあのお屋敷を見つけて……そうしたら、中にあの白い着物の女の人がいて……それで……。
「夕立があったから、この祠で雨宿りしてる内に眠っちまったんじゃな。みんな心配しておるぞ? さあ、帰ろう」
気を失う直前、女性の首がろくろ首のように長く伸びたことを思い出し、再びあの時の恐怖が蘇えって背筋に冷たいものを感じていると、祖父がそう言葉を続けて僕を引っ張り起こしました。
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