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入社して一か月ちょいの新入社員のボクに、アカツキ製薬の看板を背負わせるなよ。変な恰好って言われたのも、むかつく。あれは、ボクが、この世でもっともカッコいい、と思っている女性キャラの服だ。形だけでも真似て心を奮い立たせないと、やっていられない日もあるんだ。
「わが社は、君たちの個性を尊重する。君たちも個性を活かして、わが社に貢献してほしい」
と社長も入社式で言っていた。あの日の社長の言葉はよかったな。
「『薬で人を幸せにする』が、わが社の社是だ。創業以来、七十年もの間、君たちの先輩が、そうやって、薬を通じて人々の幸せに貢献してきた。今日から、君たちもその仲間になる。
お客様を幸せにするには、まず従業員が幸せにならなくてはならない。だから、私は社長として、君たちを幸せにしたい。ガバナンスとコンプライアンスに注意しながら、ダイバーシティを尊重して経営を行う。君たちが当社に入社してよかったと思えるように」
社長の挨拶と課長の言っていることは、あまりに違いすぎないか。
「こら太田! こんな簡単なこともまともにできんのか!」
フロアの向こうの端から、秘書課長の怒鳴り声がした。秘書課長の前で、長身の美女が青ざめた顔をしていた。あの子は、いつきの同期、名前は確か‥‥太田早苗と言ったっけ。
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