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今日はおやすみ
寝ているだけ、ホントに何にもしたくない。
そんな時もあります。
さて。
天下に轟く世界的犯罪抑制及び更生機関『MIROC(マイロック)』日本支局東日本支部に、ひとりの敏腕特務員がおりました。
技術部特務課の主任、カイシャ名はアオキカズハル、コード名を『サンライズ』。
彼には元々、他人には言えない特殊な力がありました。
肉体的な取り得も特になく、特別頭脳明晰というわけでもない、性格的に前に出ていこうという程でもない、かなり中途半端な立ち位置の中、生き残っているには、やはり、訳があるのです。
瞬時にひとの心をのぞく『スキャニング』、心を読んだ相手の意思をことば一つで操る『シェイク』、ふたつの異能を周囲にはばかりながらもこっそりと駆使し、生き馬の目を抜くがごとき任務においても、何とか日々を凌いでおりました。
年の頃は三十路も半ば。肉体的にも精神的にも過酷な任務をこなしているようには、とてもみえません。
中肉中背、大衆に混じればすぐに忘れられてしまいそうな雰囲気、ありがちな黒ぶち眼鏡のせいでどこにもいそうなリーマン顔でしたが、それでも、ふと目が合った時、内部に潜む能力のせいか、眼鏡の奥の眼力が強いせいか、なんとなく気になって立ち止まって眺める者もいないではありませんでした。
かくのごとく日々、悪を駆逐すべく奮闘する戦士ではありましたが、本日は、束の間の休息であります。
そう、今日はただのおっさん・本名の『椎名貴生』として、我が家で惰眠をむさぼっておりました。
しかし。
午前九時半を過ぎたころ、一連の『それ』は突如、幕をあけたのです。
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