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真夏のひとりでおつかい
チャリで出たのを少し、いや、かなり後悔した。
まだ十時になってないはずだが、日差しはかなりきつい。汗が吹き出して来た。
スーパーふじよしは自宅から二キロ近く離れているので行くのが面倒くさい。
そこで近場で済まそうと、すぐ近くの八百屋にあるかと思って寄ったら、なんとシャッターが下りていた。
お盆休みだという張り紙がど真ん中に貼られているのみだ。
「しゃらくせえ! オレなんかお盆だということすら忘れてたのに」
ついシャッターを蹴りつけようとして、あまりにもオトナゲないので足を宙で止めた。
少し離れたコンビニを思い出す。
何と言う名前だったか、メジャーな名前ではないし、品ぞろえがあまりないという噂もあるし、普段使わないのでよく知らなかったが、困ったらとりあえずコンビニでしょう、と気を取り直して彼はまたチャリにまたがった。
行ってみると、店は開いているにはいたが、確かに品ぞろえが貧相だった。
アラビキコショーなんて、置いてないそうだ。バイトだろうか、なんとなく腫れぼったい目をした若い女の子が、
「あ、ら、び、き、ですかぁ? えっとぉ」
かなりしょっぱい対応だった。「ないかなー」
ないならないってさっさと言えよ。
貴生、むっとしながら店を出る。
もわっとアスファルトの熱気が襲ってくる。
背中も汗ばんできた。後悔ばかりが押し寄せる。
―― こんなことなら最初から車でふじよしに行けばよかった。
ふじよしに向かって、自転車のペダル踏みしめ約十分。
「がーん」
なぜか、休みだった。
「ナマイキなぁぁ、ふじよしの分際でぇ」
悔しがっても、開いていないものは開いてない。
念のために、店の裏に自転車のままぐるっと回り込んだ。
すでに目がギラギラ血走っているかもしれない。
椎名さん、はっと顔を上げた。
―― 他にも気の毒なヤツ、みつけたぞ。
駐車場に、赤いスポーツカーが入ってきたのを眼の端にとらえた。車はこちらにやってくる。
S3000……運転手が目に入って、椎名さんあわててチャリのブレーキをかけた。
じゃっ、と半分横滑りして、チャリは急停止する。
「あら、ぐうぜんねえ」
すい、と降り立ったのは、粋なグラサン、袖無しのニット・スーツ、出るところは出っ張り引っこむところは引っこんで、濡れたルージュは車とお揃い。
「元気してた? サンライズ・リーダー」
急にコードネームで呼びかけられ、思わず身構える。
「まさか……」
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