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この分だと有花にはまだ何かあるのかもしれんな。
ICカードをチャージしている有花の後ろ姿を見ながらワシは、そんな事を思った。
ハローワークに着いてワシは先ず有花に確かめる。
「有花、まさか雇用カードは…」
「持ってないわよ」
うむ、少し勘ぐり過ぎたか。
ワシは待ち合い名簿にタチバナと記入すると、それ程待たずに職員と思われる女性に呼ばれた。
職を探すのは飽くまで有花だから、ワシは有花の後ろに座らせてもらう。
「このハローワークは海外の方、障がい者の方、限定で仕事を斡旋します。証明書はお持ちですか?」
「はい、これ」
有花は障がい者手帳を差し出した。
「ご提示ありがとうございます。今、雇用カードを作ってきますので少々お待ちください」
女性はそう言うと席を立った。
と、有花が肩越しにこっちを向く。
「仕事見つかるかなぁ」
「選り好みしなければ有花はまだ若い。門出は広いと思うぞ」
「選り好みって…したくもない仕事には就きたくないよ」
「贅沢を言っている場合ではない。働かざる者食うべからずだ」
「はーい、はい」
「返事は1回で良い」
そんな事を言い合っていると、雇用カードと資料を持った女性が帰って来た。
有花は前に向き直る。
「橘有花さん。こちら雇用カードになります。次回以降は待たずに相談、職探し出来ますので大切に保管して下さい」
有花が雇用カードを受け取ったところで、女性は説明に入った。
「何か就きたい職場は有りますか?」
「キャバ嬢かパチンコ屋の店員かガソリンスタンド」
有花め、まだキャバ嬢と言っておるか。
おまけにガソリンスタンドが増えておるし。
「水商売は基本、お客様とお酒を飲みながら話をするので未成年の方にはお勧め出来ません」
「じゃあ、パチンコ屋の店員とガソリンスタンドは?」
「そちらも未成年の障がい者枠は今のところ見つかりませんね。橘さん、未成年の障がい者なら、就労継続支援事業所が在りますが、如何しますか?」
「就労継続支援事業所?」
途中で噛みもせずに有花は言ったが、訳がわからんと言った声色だ。
ワシも初めて聞いたので、名前が頭の中に入ってこない。
「実際にお仕事して、お給料を貰いながら一般就労に就く為に訓練する場です。利用者の上限が有りますが、今、空きがあるところはここです」
「就労継続支援事業所、ベルセルク?どんな事するの?」
「販売、配達ですね。近くにある生活支援センターから、作って頂いた商品を売る事業所で1階はお店形式になってます」
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