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有花は物珍しそうに店内をキョロキョロと見渡している。
「言っとくが今はエコバッグしか買わんぞ」
「解ってるわよ、おじさん。しつこいなぁ、歳とった証拠よ」
そんな何度も言った覚えはないのだが、有花は煩わしそうに言った。
しつこいのが、どうして歳とった証拠になるのか、いまいち解らん。
店内の上方にある売り場の名前を頼りにエコバッグが売られている場所へ行く。
「いやーん、可愛い!エコバッグって初めて買うけど、色々なデザインの物があるのねー」
「女の子だから、デザインも気になるだろうが、保冷、保温性は有るのか、チャックは付いてるか、耐重はどれくらいあるのか、よく吟味してだな…って、又!有花よ、少しは待つことを覚えんか!」
グリーンと英語で描かれた、樹木や草木が可愛らしく描かれているバッグを有花は手に取ると、さっさと会計と書かれた方へ行こうとする。
「別に私が使うものなんだから、私が気に入ったので良いでしょ?!」
それだけ告げて有花は本当に会計の方へ行ってしまった。
やれやれ…安物買いの銭失いにならなきゃ良いがな。
ワシは有花がさっさと決めてくれたお陰で時短になったと思う事にした。
後は確かスーツ1式と靴だったな。
1番時間が掛かりそうなのが残ったな。
有花がどんな物を選ぶのか…懸念は消えなかった。
エコバッグを買った有花は機嫌良さそうに、コンビニの袋を中に入れてワシと並んで歩いている。
と、スーツも取り扱っているブティックが見えてきた。
「〜♪〜〜♪あ、次は此処ね?」
「うむ。ワシが選ぼう」
「やだ、おじさん。女物の服を選ぶの?周りから注目を浴びそうだから止めて」
確かにそうだが、先程の300円ショップといい、コンビニでのバイトの決め方も有り、どうも有花は直ぐに1つ決めると後はレジへ持って行くだけと言う買い物をしそうだ。
エコバッグと違い、スーツは高い。
買って後悔せねばいいが…。
「あい解った。有花よ、スーツは試着してから買うんだぞ」
「そんなの解ってるわよ!良いから、おじさんはブティックの中で待ってて」
そんな事を話しながら有花とブティックに入る。
ブティックなだけあって、中にはカジュアルな服からシックな服まで色々並んでいた。
ワシは300円ショップの時のように、あちこちキョロキョロする有花の手を引き、スーツ売り場へ行く。
「レディーススーツなら、やっぱり下はスカートが良いなぁ」
有花は、黒いスーツの上下と少し離れて売られている白いシャツを手に取り、試着室へ向かった。
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