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集団レイプか…。
ワシもお袋も有花に掛ける言葉が見つからなかった。
有花の話は続く。
「高2の時、思い切ってお母さんに話した。そしたらよくある話だって言われて終わった。その時、決めたの。高校卒業したら家を出ようって。只、昨夜まで居た繁華街でチーマー達にお金取られちゃって…隙見て逃げた先が、おじさんと会ったバーだったの…」
有花は話終えたのか、そこまで話すとワシをすがる様に見つめた。
ワシは視線をお袋に向ける。
お袋は言った。
「有花ちゃん、ここも安全とは言えないけど、権蔵が付いてれば大丈夫よね」
確かにこの街には玉名組という極道の組織がある。
抗争とまではいかないが、ワシの命を狙うタイミングを虎視眈々と伺っている節があるのは感じていた。
ここ何年かは嵐の前の静けさと言ったところか。
それより驚いたのは、その後のお袋の言葉だった。
「お袋、ワシの命が狙われて何年も経つのに有花さんを巻き込むのか?」
「巻き込むなんて人聞きの悪い。玉名組なんかにやられるタマじゃないでしょ!権蔵。女の子の1人も守れなくてどうするの?チンチン付いてるんでしょ!」
てっきり有花を家に帰す名案を出してくれると思ったが、とんだアテ外れも良いところだ。
「私、孫娘が欲しかったのよね。それなのに権蔵は結納する相手は居ないし、夫は玉名組員に呆気無く殺されちゃったし。殺した組員達は、今頃はムショで不味い食事でも摂ってるんでしょ」
「え…じゃあ、私を此処に置いてくれるの?」
有花の声は何処か明るい。
まだ極道の世界の恐ろしさを知らないガキだから仕方ないのかもしれないが。
「言っとくが有花さん。此処で生活するのは100歩譲って有りとして、だ。きちんと仕事を探すんだ。良いな?」
「やったあ!おじさんのお母さん、ありがとう!おじさん、私、今日からお仕事探すから宜しくね!」
「保護者の認め印が必要な時は一旦、帰って来い。後、まだ玉名組に面が割れてないのは有花さんだけだ。屋敷に出入りする時は怪しい者が見てないか、よく見てから中に入るんだぞ。ウチの組に関する者だと知られたら厄介だからな」
「はーい。じゃあ、行ってきまーす!」
有花は自分の生い立ちを語っている時とは大違いな明るい声を上げて部屋を出て…戻ってきた。
「おじさん、この近辺案内して。ついでにハローワークの場所も」
そう言えば有花はまだこの辺りの土地勘がないんだったな。
「仕方ない。だが、その前に朝食だけ摂らせてもらうぞ」
「あ、私も」
有花よ、朝食も摂らずに職探ししようとしてたのか。
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