職探しへ

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だが、仕事を探す気になったのは良かったというべきか。 余程、家に帰るのが嫌だったんだろう。 ワシは玉名組の事が頭を掠めたが、とりあえず朝食を摂りに有花をリビングまで案内した。 「おじさんのお屋敷、広くて綺麗ねー」 「後で空室を1室与える。今日から、そこで寝泊まりするんだぞ」 「おじさんと同じ部屋じゃないんだ?」 「当たり前だ。あやまちが起きたらどうする?ワシも男だ。今度は胸揉む位じゃ済まないぞ」 「そしたら、さっきのおばさんに言い付けてやる」 有花め、お袋に気に入られてると思って良い気になりおって。 リビングには誰も居ない。 ワシはテーブルに面した椅子に有花を座らせた。 「台所へ行ってくる。料理人に急遽もう1人分の朝食を作ってくれる様に頼んでくるからそこで待っとれ」 「はーい。でもおじさん、他のタナカさん達は?一緒に食事しないの?」 「千夜組員が揃って食事を摂るのは夕食だけだ。一応、皆に紹介するから、町とハローワークの案内は、夕方までだぞ」 「やったあ!おじさんとデートだ♪」 「デートではない。只の案内だ」 ワシは有花にそう釘を刺すと台所へ向かう。 台所では料理人の酒井が洗い物をしているところだった。 「酒井、済まんがもう1人分朝食を作ってくれんか?」 「それなら、田中さんから話を少し伺っております。何でも可愛らしい娘さんを連れてきたとか」 流石、田中だ、気がきくな。 「頭、そこの調理台の上に2人分の朝食が置いてあります。持ってって下さい」 酒井の言葉に調理台の方を向くと、持ち運び易い様に、ワンプレートの皿に具沢山の朝食が2つ置いてあった。 ワシは片手に皿を1つずつ持つとリビングに戻った。 と、リビングで待ってる筈の有花はいつの間にか田中とお袋と3人麻雀をしている。 「はい!それロンねー。大三元のリーチの一発で…」 「有花さん!麻雀しとる場合か!朝食を持って来たぞ!」 「後で食べるから、そこ置いといて。次でオーラスなの」 「オーロラだか、何だか知らんが町案内の時間が無くなるではないか!」 「権蔵もたまには麻雀やればいいのに…有花ちゃん、また後でね」 「片付けは自分に任せて、お嬢さんは朝食を摂って下せえ」 「そうよ。まだ若いんだから、沢山食べないとね。私は離れに戻っているから又誘ってね」 お袋はリビングを去り、田中は麻雀の後片付けをしてる中、有花はようやくさっきワシが座らせた席へ戻ってきた。 「あーあ。勝ってたのになぁ。おじさんは麻雀やらないの?」
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