6人が本棚に入れています
本棚に追加
だけど、そんなある日、
「小泉マキって可愛いよな」
「ああ、あの小さいところが何とも、放っておけない感じがするよな」
クラスの男どもがそんなウワサ話をしているのを聞いて、心底びっくりした。
ウソだろう、あのマキだぜ。
マキが可愛い? 放っておけない?
すると、オレの視線に気づいたのか、そいつらは少し気まずそうに、
「そういや宮中は小泉と仲がいいよな。もしかして、付き合ってるのか?」
「そんなわけねーだろ!」
とっさに否定したが、
「そうか、ならオレが告白してもいいよな」
「いや……、それも困る」
オレは妙に焦った気持ちになる。
「困るってなんだよ。結局お前、小泉のことが好きなんだろ」
「そういうんじゃない、けど……」
「あ、わかった。小泉は2組の横川と付き合ってるんだな」
「!」
「そういや宮中は小泉や横川と近所だもんな。だから知ってるってわけか」
横川は、ツトムのことだ。
横川ツトム。
「横川は頭いいしな。一年にして生徒会に引っ張られて、次の生徒会長は横川だって評判だもんな」
「チガウ!」
思わず大声をあげてしまったオレを、クラスメイトたちは怪訝な顔で見てきた。
「違うって、何がだよ」
「いや、えーと……」
「そうか、横川じゃなくって生徒会長の方か」
「え?」
「生徒会長が小泉のこと好きだってウワサ、あれ本当だったんだな。そっかー、小泉の相手は生徒会長かー」
「……」
「生徒会長が相手じゃ、しゃーねーわ、敵わねーもんなー」
などと言いながら、またグラビアアイドルの話に戻っていくヤツらを尻目に、オレは頭を抱え込んでいた。
「生徒会長がマキのことを好き? そんな、マジかよ」
この学校の生徒会長といえば知らぬ者はいない。
成績優秀でスポーツ万能。
おまけに美形で家も金持ちときて、まったく非の打ちどころが無い、満場一致で生徒会長に推薦された男だ。
一方マキの方は何の変哲もない、至って平凡で……。
いや、そりゃあお節介でお人好しで、なんにでも首を突っ込む無鉄砲なところはおもしれー女だと思うけれど、でもすぐに泣く面倒くさいところもあるぞ。
そんなマキのことを、あの生徒会長が好きだって!?
最初のコメントを投稿しよう!