0人が本棚に入れています
本棚に追加
私は久しぶりに見た弟のあの笑顔が忘れられず、すぐに長靴を買いに走った。いくつか靴屋を見て回ると、鮮やかな青い長靴が目に飛び込んできた。ピカピカに輝く長靴をプレゼントすれば、弟は喜んで私のことをいい姉だと思ってくれる。男の子だし、きっとこの青色が気に入るはず。そう考えた私は青い長靴を手にとり、足早にレジへと向かったのだった。弟にプレゼントを渡すことを両親は嫌がるだろうが、この前全国模試で一位になったばかりだったので機嫌は簡単に取れるだろうと、私は誇らしい気分でプレゼント用に包装される長靴を眺めていた。
家に帰ると私は早速両親に弟にプレゼントをする許可を取った。全国模試一位のおかげで、すんなりとお許しがでた。私は長靴の入った箱を抱えて弟の部屋へと向かう。ノックをすると「はい」と言うか細い声を辛うじて聞き取ることができた。
「入るね、えっと、昨日言っていた長靴、買ってきたよ。開けてみて」
私は弟に箱を差し出す。弟は無言で受け取ると、ゆっくりと箱の包装を解いた。そして青い長靴をじっと見つめた。
「ど、どうかな……?」
何も言わない弟に少し不安になってしまった私がそう言うと、弟は長靴を手に取って言った。
「青い、長靴……。ありがとう……ありがとう……」
笑っているような、でもどこか遠くを見ているような瞳。
「お姉さん、明日は雨、降りますか?」
弟は窓を指さした。
「あー……明日は晴れの予報だけど、どうかな」
私の言葉に弟は「そうですか……」と少し残念そうに呟く。すぐに使えないのは残念だけれど、私の心はどこか晴れ晴れとしていた。
「まあ、雨が降った時にたくさん使ってよ」
私はそう言って弟の部屋を後にした。
最初のコメントを投稿しよう!