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由子の声に気づいた、二人の男女が、振り向く。似たような学校の制服を着ている。どうやら地元の中学生らしい。
違う、由子は愕然とする。
「ねぇ。この辺で、あなたたちみたいな男女の二人連れを見かけなかった?」
気を取り直して、都と志信について聞いてみる。すると、ツインテールの少女が西を指さして、応える。
「あっちの方へ真っ直ぐ歩いていく二人……たぶん恋人同志だと思う……見たよ。あなたの探している人かはわからないけど」
「そっか。ごめんね、ありがとう」
「見つかるといいね、その人達」
手を振りながら、由子は車に乗り込む。
「どうだった?」
「西へ真っ直ぐ行ってください」
自分の声が、金属のように冷たくなっている。そのことに気づいて、由子は両腕で自らを抱きしめる。怖いんだ、私は。
二人を連れ戻すために、飛び出したのに。
「田辺先生」
「何?」
「カケオチの意味って、恋人同志が夫婦になるためによその土地へ逃げること……ですよね?」
田辺は国語教師だ。駆け落ちの意味くらいわかるだろう。
由子の問いに対して、田辺は肯定する。
「そうよ。それしか意味はないわ」
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