かけおち、ごっこ

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「でも、今の法律では、二人は夫婦になれませんよね、まだ」  身震いをする。嫌な予感がする。 「そうね。二人が本気で駆け落ちを企てているとすれば……亡命くらいしちゃうかもしれないわね」 「まさか」 「……それか、二人で海に身を投げるか」  運転席の犬山が、おどおどと口にする。滅相もない! 由子は咄嗟に口を突く。 「二人はそんなことしません、いくら、二人が理不尽な理由で離れ離れになるからって、そこまで……」 「でも、わからねぇだろ。幼稚な逃亡劇を演じてる二人だ。最後はロミオとジュリエットのように」 「犬山先生、言い過ぎですよ。心配する生徒の前で、そんな」 「わかってますよ。可能性の話です。それより、このまま西へ直進すると、フェリー乗り場に追突しますよ?」  本当だ。このまま二人の消息について言い合っていたら、本島の西端へ辿り着いてしまう。由子は声を大にする。 「と、止めてください!」  車が止まる。より一層強くなる潮の香り。  閑散とした村営フェリー乗り場。静まり返った待合室。今日の運行は終了したらしい。  事務所だろうか、プレハブ小屋の一室だけが、電灯をつけている。
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