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* * *
「付き合う? 俺と?」
「うん。駄目?」
「いや。構わない」
無愛想で素っ気ない志信と、平然と言葉を交わせる都は、クラスの女子から不思議に思われていた。「どうして怖くないの」と聞かれても、「怖い? なんで?」と逆に聞き返してしまうのだから。
都も、クラスの男子と堂々と言葉を交わすような人間ではなかった。ただ、気になるから、志信に、声をかけていたのだ。
二人の距離は、少しずつ縮まり、春、軌道が一つになった。
「付き合おうよ」なんて、どうして口にできたのか、今となってはわからない。だけど都は、志信と一緒にいるだけで、自分がいつもの何倍も強力になったように感じるのだ。
だから、「構わない」と拒否されなかった時、嬉しくて舞い上がりそうだった。津川君という呼び名が、ノブって自分だけの名称を使えるようになった。そして、ノブは、あたしのことをミヤコって最初は恥ずかしそうに……今も恥ずかしいのかもしれないけれど、呼んでくれるようになった。「俺も、都のことが、好きだ」と改めて言われた時、悲しくもないのに、泣いてしまった。
だから。
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