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志信が、いなくなってしまうなんて、信じられなかった。信じたくなかった。
「俺、転校するんだ」
両親の都合で、引っ越すことになって。自分はここに残りたかったけど、残れなくて。離れ離れに、なってしまうから。
「別れたほうが、いいんじゃないか」
そんなことまで、言いだして。
「イヤだ。なんでそんなこと言うの!」
「お前を、これ以上束縛したくない」
嘘だ。あたしがノブを束縛しているんだもの。あたしは好き好んで束縛されているんだから。だから。
「ヤダよ。そんな形で、おしまいだなんて」
都は、志信にせめてもの反抗をする。
「最後に、あたしのワガママ聞いてよ」
「……何だ」
「ノブが転校するのは二学期でしょ? それなら一緒に沖縄には行けるんだよね? 自由行動の時間、一緒にいて。お願い」
何も言わずに、志信は都を見つめる。彼女は、涙腺を潤ませ、志信を見つめつづける。
そして、志信が肯首する。
「わかった。でも、本当にそれだけでいいのか?」
「お願いはそれだけ。だけど……ねぇ」
都は思いっきり息を吸って、吐き出したことを覚えている。大切な言葉を、口にしたその瞬間を。
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