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都は、繋いだその手を放さないように、きつくきつく握る。
バカみたいだ。かけおちだなんて、大層なこと言って、やってることは制限時間オーバーの掟破りだけで。
なのに、志信は頷いてくれた。それで都の
気がおさまるのなら、いつまでも傍にいてあげる、と。
別れ話を切り出した人間が、なんでそこまで優しくしてくれるのか、都には理解できない。だけど、志信は今も、飽きずに都の手を握っている。汗ばむ手が重なりあい、少しだけ重みを増している。立ち止まる。
「どうした?」
歩きすぎて、まめでもできたのか、と志信は都に問う。違うよ大丈夫だよと無言で首を左右に振って、都は志信の横に並ぶ。
「もう、フェリー、運転終わってるよね」
「……」
「ノブ、知ってて、あたしを、ここまで連れて来たんでしょ」
「お前こそ、わかってたくせに」
冷たい汗が、滴り、落ちる。
「宮古島に行く大型客船は、那覇港から週に一回しか出ないわ。それくらい、あたしだって調べてる。だけど」
押し殺したような声で、都は続ける。
「ノブが、あたしと同じ名前の島に行こう、って言ってくれたから……」
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