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* * *
「みつけた……」
安堵して、田辺が口を開く。犬山は、そっと車を止める。停車したのを確かめて、しかめっ面の由子が外へ飛び出す。
「三藤さん、津川君」
由子は、あえて都を三藤さんと呼ぶ。自分は、クラスの代表として、二人を探していたのだと、暗に示すために。
「のの」
止まっていた時間を動かすように、ぎこちなく、都が由子を呼ぶ。
「カケオチは、楽しかった?」
意地悪そうに、由子が声を荒らげる。
「あなたたちが、自分たちの世界に入り込んでいる間、私たち、心配してたんだからね、ここまで、追いかけてきたんだからね、もしかして事件や事故に巻き込まれたんじゃないか、海に飛び下りちゃったんじゃないか、もう死んでるんじゃないかって……」
硬直したままの二人を、由子は責める。責める。責める。
「どうして、そんなバカなことするのよ、カケオチなんて、できるわけ」
「できたよ」
遮る声。身体を震わせ、何も言えなくなった都をそっと抱き寄せ、由子の叱咤をじっと聞いていた志信が、遮る。
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