かけおち、ごっこ

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「あ、都ったら津川君の分までスケジュール作ってるの?」  都の自由行動のスケジュール欄を覗き込んだ由子が、声を上げる。 「た、たいしたことじゃないって」  ごまつぶのように小さな黒い文字がびっしり書き込まれたスケジュールを、都が慌てて両手で隠す。その仕種をどこか不審に思いつつ、由子はたずねる。 「私にも教えてくれないの?」 「秘密だから」  都が口を開く前に、志信がぼそっと呟く。顔を赤らめて、都も頷く。 「う、うん。二人だけの秘密なの」 「……そっか。野暮なこと聞いちゃってごめん。楽しい時間が過ごせると、いいね」  由子は二人の邪魔をしないよう、そっと机から離れる。だけど、都のしおりに書かれていたカケオチ、と片仮名で記された文字が、頭の中から離れない。  戸惑い、ざわめく胸を抑え、由子は静かに毒づく。 「見間違いかもしれないじゃない」  ……あの二人がカケオチだなんて、冗談に決まってるわ。  だから、不吉な文字を忘れてしまった。  修学旅行の自由行動当日、本当に都と志信が姿を消してしまうまで。
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