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「都の様子がおかしいことくらい、わかってたわよ」
「そうか」
「で、どうするの? カケオチできたってことは」
「別れないよ、都とは」
キッパリ、すっきりしたような表情で、志信は言う。それを見て、見届けて、由子は安心する。
「離れ離れになったら、それでおしまい、なんて、悲しすぎる。都が、遠距離でも応えてくれるなら、俺は、続ける」
それが、カケオチの、答。
「早くて一年半頑張れば、大学生になれるんだ。そしたら、自分一人の力で都に会いに行けるだろ?」
「……何、その思考の転換は」
「都と歩きながら考えてただけだ。嫌がる都を突き放してまで、俺は、関係を終わらせることができない不器用な人間なんだよ」
「今頃気づいたの?」
ふふっ、と微笑む由子に対して、むすっ、と頬を膨らます志信。それを見て、由子。
「子供みたい、頬膨らますなんて。……それにしても今日は饒舌ね。いつもなら必要最低限なこと、喋らないくせに」
「悪いか」
二人の言い争う様を、楽しそうに聞いている犬山が、ぽつりと呟く。
「好きな女の子のことになると、いてもたってもいられなくなるのさ」
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