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チャンスは一度きり。夕方六時から七時までの自由行動。志信の左手を握りしめて、都は問う。
「本当に、いいの?」
不安そうな都を、志信は元気づける。
「いいよ」
都は背負いなおす。
小さなディパックに、ほんのちょっとのお金と、計り知れない可能性と勇気、たっぷりの愛情を込めて。
そして、志信の言葉に頷く。
「あたしも」
潮風が、制服姿のままの二人を導く。無謀な計画をした二人を。
初夏。陽は高いが、ゆっくり西へ傾きつつある夕刻。陽光に反射されたエメラルドグリーンの海はたゆたゆと、揺れる。
「じゃ、行こう」
緊張で汗ばむ手を握りしめたまま、歩きだす。一歩、また一歩。
その先にある、未来を求めて。
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