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「……お前のこと」
今なら、真っ赤な顔も暗闇に紛れてわからない。だから、少しくらいクサイ言葉だって言える筈。
「都」
空元気なのはわかってる。バカみたいにはしゃいで、志信を喜ばせようと、一生懸命になっている都が、少し、切ない。
「無理してるだろ」
「してないよ」
都は月明かりの下で、笑顔を見せる。志信のために。不安そうな表情、一つ見せずに。
「あたしが、言ったんだよ」
「そうだな」
言い出しっぺは都だ。だけど、志信が都を追い詰めたのは事実。
どのくらい、歩いただろう。最初は、他のクラスメイトに不審がられないよう、国際通りの観光を楽しんだ。それから十五分くらいして、二人は北上しながら集団からこっそり抜け出し、西へ方向転換をした。
向かうのは泊港。「離れ島に続く船に乗ろう」、そう言ったのは都だ。どうせなら……彼女を喜ばせたい。
志信は、夢物語の続きを、口にする。
「宮古島に、行こう」
「どうして?」
「……どうして、って。お前と同じ名前だから」
ぼそりと伝えられた言葉に、都の身体、熱を帯びる。呆然とした都は、驚いた顔のままで、志信に反応する。
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