久しぶり、マナちゃん。

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 小さい頃、「マナちゃん」という子がいた。  サラサラで艶々の黒髪が印象的で、ふわふわとした女の子。ふわふわしすぎて、「この子は、実は人形なのかもしれない」と疑ってしまうくらいだった。  高校生になった今でも、可愛い人形を見ると「マナちゃん」を思い出してしまうくらいに。 「なー、塩崎の初恋の君って誰」 「なんだよ、初恋の君って。古典の授業の影響受けすぎだろ」  彼を一文で説明すると、漫画の主人公の親友ポジション男子とわかりやすく表現できる佐藤。彼がこんなことを聞いてきたせいで、久しぶりに「マナちゃん」のことを思い出してしまった。  他の友達だったら、何も考えずに初恋の人のことを話していただろう。  だが、相手は親友ポジションの佐藤だ。もし「初恋の人」の話をしたら、次の日には校内全員が俺の初恋の人について知ってしまっていることだろう。  奴は大きく身振り手振りをしながら「んな事はどーでもいーんだよ。でさ、初恋はいつだった? ちなみに、俺は幼稚園児時代に園内の女の子に結婚を申し込んでたらしい」なんて、要らない情報までつけて俺への回答を急かしてくる。
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