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面倒くさくなった俺は「そんなの覚えてないよ」と、佐藤を視界から消しながら吐き捨てた。こんな答えで満足できるわけない佐藤は、「えー、塩崎くんの初恋の人、知りたいな♡」なんてそらしたはずの俺の視界に入ってくる。
気持ち悪すぎて吐き気がしたが、なんとか逆流させる事は阻止した。
何かを犠牲にしなければ佐藤は引かないと悟った俺は、もっとも傷が浅そうな「マナちゃん」を犠牲にする。最も、彼女の秘密がばれなければだが。
彼女の秘密は、余程のことがなければバレないであろう。
俺の家族に聞いても「知らない」というし、幼稚園の子じゃないので、他の人に聞いても分からないはずだ。
「初恋とは言えないけど、特別な女の子はいるよ。マナちゃんって子で、俺の中で一番女の子な子」
「へー、そんな可愛い子なの?」
佐藤に「人形みたいに可愛い」というと、「へぇー、塩崎がそういうなんて、さぞ可愛い女の子に違いない」とニンマリしていて気持ち悪かった。思春期男子が「猿」と例えられる所以は佐藤のせいだと思うくらいに、奴は猿顔をしていた。
こんなさると同類にされたくないと、俺はいまだに「マナちゃん」を想像している猿を置いて席を立った。
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