夏の罪

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その翌日も、わたしはおっさんの好みそうなワンピースを着、おっさんの好みそうなメイクをして、おっさんにもらったブランドバッグを持って家を出た。 今度こそ、帰ったらカンジはもういないかもしれない。 無性に帰るのが怖くなり、スーパーをぶらついて無駄な買い物をして帰路についた。 アパートを見上げると、2階の角部屋の窓にはちゃんと灯りがついていた。 あんな気まずい会話をした後も、セックスの頻度は変わらなかった。 わたしの体に障りがないかぎり、男は相変わらず朝も夜も激しくわたしを求めた。 乳房を吸われ、肩を甘噛みされ、性器で突き上げられながら、「カンジ」と呼んでみた。 けれど、どうにもそれが彼の名前だという気がしなかった。 男の汗はさらさらしていて、おっさんたちとも過去の恋人たちとも違う不思議なにおいがした。 「そろそろかも」 上空の大気が入れ替わり、日中の気温が急に下がったある日、わたしのPCをいじっていた男がぽつりと言った。 「なにが」 ポテトチップスの袋に腕をつっこみながらわたしは訊いた。 その日はおっさんの相手をしなくてもいい日で、わたしたちはセックスの後の甘ったるい倦怠の中にいた。 「そろそろお迎えが来るかも」 男は画面から視線を動かさずに言った。 ここへ来た日に身に着けていた、クリーム色のTシャツとオリーブグリーンのワークパンツという格好で。
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