夏の罪

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「……ごめんね」 再び煙草をくわえながら、男はか細い声でつぶやいた。 「や、あたしこそごめんね。カンジはスマホも持ってないもんね。仕事とか無理だよね」 男は唇を歪めた。 わたしはまたも自分の失言に気づいた。 ふ──────っ。 男は、闇夜に文字でも書けそうなくらいゆっくりと白い煙を吐きだした。 そして、 「ごめんね、ほんとに」 と先刻よりもさらに細い、震える声で言った。 「真夏には悪いけど、1日で3万も4万ももらえるようなバイト、男にはできないから」 胸の内側をひやりとしたものが流れた。続いて、耳たぶに血が集まってくる。 ばれていたんだ。 田舎の両親は、わたしが美容系の専門学校を出てそのまま社会人になったと思いこんでいるけれど、本当は違った。 専門学校さえ途中で退学して、わたしは風俗のバイトを始めたのだ。 昼間から女の子を高級ホテルに呼びつけて肉欲を押しつけてくる金持ちのおっさんたち相手の、デリバリーヘルスだ。 短時間の労働でも実入りがいいから、わたしはどうしても沼から抜け出せなくなってしまったのだ。
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