夏の罪

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「は? お迎え?」 あまりに唐突すぎて、わたしの声は裏返った。 「うん」 男はまるで飲み納めのように勢いよく、ごくごくと喉を鳴らしてコーラを飲んだ。喉仏が上下するのをわたしはじっと見つめた。 「何それ、月にでも帰るの?」 笑いながら言ったのに、男は神妙な顔をこちらに向け、 「月?」 と初めて聞いた単語のように繰り返した。 「いや、だから」 わたしが言葉を継ぎ足そうとしたときだった。 ぴんぽ────────ん。 玄関のチャイムが鳴った。 男は一瞬、かすかに震えたように見えた。 ポテトチップスの油で汚れた手をウエットティッシュで拭いて立ち上がり、ドアホールを覗いた。 こちらに何かを見せながら立っているのは、どう見ても警察だった。 「警視庁の者ですが、三上(みかみ)真夏さんのお宅でお間違いないでしょうか」 驚きすぎて、声も出なかった。 ゆっくり振り返ると、男は凪いだ海のように微笑んでいた。
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