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こわごわとドアを開くと、すかさず紺色の制服に包まれた腕が伸びてきて、ドアは最大まで開かれ強く押さえつけられた。
警察官は6人もいた。その佇まいのものものしさは、わたしを圧倒した。
路上に停まっている白と黒の車は、どう見てもパトカーだった。
グエンだとかホアンだとかトランだとかをつなげた長い名前を警察官が口にして、男が「はい」とうなずくのを、わたしは真っ白になった頭で眺めていた。
左右両側から警察官にホールドされて連行されながら、男は首だけでわたしを振り返り
「じゃあね」
と微笑んだ。
それが、最後だった。
男が東南アジアの窃盗団のひとりだったという情報は、少し後になってからようやくもたらされた。
わたしは犯人隠避の疑いをかけられ、部屋の隅々まで調べられ、おびただしい量の調書を取られた。プライバシーも何もなかった。
いかがわしいバイトをしていたこともあり、逃走を手助けしていたのではないかという疑いはなかなか晴れず、わたしは心身ともにぐったりと疲弊した。
緩急をつけて尋問されながら、ぽっかりとした心の穴に向かって、何度も彼を呼んだ。
カンジ。
カンジ。
──あなたは、カンジなんでしょう?
行き場所なんてどこにもないんでしょう?
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