夏の罪

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男は、煙草とセックスとコーラが好きだった。 カフェインが苦手で、酒も飲まないという。 「お子ちゃまかよ」 わたしが言うと、男は特に気を害した様子もなく下唇を突きだしてみせた。 冷蔵庫には、コーラのペットボトルが常備されるようになった。 デートらしいデートはしなかった。 男は一日のほとんどをわたしのワンルームの中で過ごした。 ごくたまに買い物に付き合ってくれる他は、外食に誘っても断られるくらいだった。 それならそれでいいやと、わたしもじきに思うようになった。 わたしの誕生日の夜だけ、コンビニで買ったショートケーキを公園のベンチで食べた。あちこちを蚊に刺されながら。 食事や着るものには、何のこだわりもないようだった。 菓子パンやシリアルやインスタントラーメンを買っておくと、わたしが不在の間にちゃんと少しずつ減っている。 夜は多めに食事を作り、翌朝もふたりでその残りを食べた。 特に料理を褒められはしなかったけれど、不満を言われることもなかった。 わたしが仕事帰りに少しずつ買い足した男物のTシャツやズボンや部屋着にも、文句ひとつ言わず袖を通した。 料理も掃除もしてくれることはないかわりに、洗濯だけは主体的にやってくれた。 なぜか自分の仕事と認識したようで、教えてもいないのに洗濯機や洗剤を使いこなし、せっせと干した。日暮れには取りこみ、意外な几帳面さで畳んでベッドの端に積んでおく。 わたしの安い下着まで、ちゃんと洗濯ネットに入れて陰干ししておいてくれた。 最初は戸惑ったものの、じきに慣れてしまった。
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