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「はいはい、大丈夫よぉ、お父さん、いってらっしゃーい」
園長は容赦なく夏希を引き離してしまう、卓海は伸ばしかけた手をとっさに戻した。ここで後ろ髪をひかれている場合ではない、早く出社しなくては。
まずは慣らしと思い、この1週間は午前中だけの保育をお願いしてある、すぐに戻るのだと握り拳を固めた時、
「あれ? 藤原……?」
奥から出てきた保育士に呼び捨てにされ、改めてその顔を見た。長身の美貌に見覚えがある。
「わ、そっか! 藤原卓海だ!」
「……岩堀華……か?」
「やっだー! 久々! こんなとこで会えるなんて!」
高校時代の同級生で、ともに目立つ存在だった。
卓海は美丈夫で秀才。
華はモデル体型の美女として。
「そっかー! ついに同級生が子供を預ける時代になったかー!」
華は高校を出ると専門学校へ通い、2年後に現在の保育園に就職できた。確かに最近は自分より若い父兄も増えたと思っていたが、よもや自分が働く園に同級生が預けに来るのは想定外だったと思い知る。
かたや卓海は4年制大学を卒業し、4年後に同じ年齢の職場の女性と結婚、2年後に夏希を授かった。特に早くも遅くないと思うが、仲間内では2番目ではあった。
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