12.奸計

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「正直に言えば、誰かをそばに置けばその人も殺してしまいそうで怖かった。でもそれ以上に、華となら楽しく暮らせそうだと思った。これからもずっと、俺と夏希のそばにいてくれないか」 卓海が熱烈な告白をしている最中、田口もやってきた。玄関を陣取る保護者達にいらだったが、その向こうに長身の卓海が見えて、途端に笑顔になる。 「おっはよー、ごめんなさい、ごめんなさーい」 我先に入ろうと人垣に分け入ったが、 「あら、梨絵ちゃんママ」 「駄目よ、今は世紀の告白中」 周りに止められ「なによ」と思った、中を見れば奥に華の姿が見える、園長も事務所の前に立っていた。 あの写真のおかげかとほくそ笑んだ。破廉恥だふしだらだと責められているに違いないと思う。華などさっさとクビになればいいのだ。 だが、周囲の反応は思っていたものと違う。 「いやーん、ドラマみたいじゃなーい!?」 「カメラはどこぞに!?」 「あん、もう、なっちゃんパパの顔が見たいっ」 田口の眉間にしわが寄る。 「──なんなの?」 「あのね、なっちゃんパパね、奥様亡くされてたみたい」 「え!?」 「で、華先生に再婚の申し込み」 「ええ!?」 「今度三回忌なんだって。三回忌ってことは、2年目ってことよね?」 「えええ!?」 なぜ卓海相手が自分ではないのかと思い、睨みつけていた。 「華先生」 ホールの入り口に立つ保育士が声をかける。
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