14 愛を叫ぶひとつの魂

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「くそ……ッ! クライヴ伯爵が君を選ばなかった理由がよくわかるよ! 君は自分が優れていると思っている。だから自分の考えが正しいし、自分の意見を通せると思っているんだ。そんな扱いにくい鼻につく女は──」  私を立ち去らせるために、私を嫌っているよう装っている。  それくらいわかる。  眼鏡。  せめて、眼鏡があれば。 「なんだよ。君なんか居たって役に立たない! 目障りだ! どっか行けよ! 君の助けは必要ない! 行け! 消えろ! 私の前から消えてくれ──」 「嫌だってばッ!!」  声の限りに叫んだ。    すると、彼は呆気にとられたようだった。 「私はあなたと生きていくの! それが叶わないなら一緒に死ぬわよ!!」 「ラモーナ……」 「そんな事もわからないの!? ほら、眼鏡があった!」 「あ!」  焦り声を上げた彼を無視して、転がっていた眼鏡を掴んだ。  驚くほど熱く、片側は割れて枠だけになっていた。  彼の傍へ戻り、眼鏡を突き出す。 「かけて。そして教えてちょうだい。なにか適切な物があれば私でも科学の力でこの書架は動かせるでしょう!? 指示を出して!!」 「……」  彼が傷だらけの手を伸ばし、眼鏡を掴んだ。  そして装着する。 「ラモーナ……棚から瓶を取ってくれ。指を切らないように気をつけて」 「ええ。どれ?」  彼が言った瓶を取り振り向いた瞬間、どこかの部屋から爆発音のようなものがあがり、熱風が吹き込んで来た。 「急げ」 「ええ」 「そこの、浮き輪みたいなものを取って」 「これ? なんなの?」 「樹脂製の接続板の一部だよ。それに液体を塗って、へ入れて」 「わかった」  どろどろの液体を、一抱えできそうな大きさの重くて固い弾力性のある分厚い板のような物に塗りたくり、彼の体と書架のわずかな隙間に捻じ込んだ。  すると、その硬い弾力性が彼の皮膚や筋肉と相互作用しながらすいすいと奥へ入り、わずかな隙間を更に少し広げた。   「よし。押して」  私は叫び声をあげて書架を押した。  彼も叫び、自由の利く腕だけで体を押し戻そうとしている。  それは永遠かに思えた。  一瞬かもしれなかった。  ふいに、するりと彼の胴体が書架から抜け、半身を起こし、右足の蹴る力も合わせて残る左足を引き戻す。  私は彼の服を掴み、同じように書架を蹴った。  彼は蟻が散るように素早く完全に這い出てきて、私に掴まりながら立ち上がった。 「大丈夫!?」 「ああ、まあ何本か骨は折れていると思うけど行こう。ラモーナ、本当は愛してる」 「わかってるわ。掴まって」  彼の腕を担いで、背中に手を回す。  私たちは部屋を出て、出口を目指した。
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