15 永遠の愛を誓う二人

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「博士!」 「レディ・ラモーナ!」 「ああ、無事でよかった!!」  持ち場を離れ、ヘールズ所長たちが集まってくる。  私は彼にしがみついて、彼を見あげた。 「結婚してシオドリック」 「ああ、するとも」 「違う。すぐしたいの。待てないわ」 「ラモーナ」 「待つ時間なんてないの」  今になって、私はガタガタと震え始めた。  涙が止まらない。  彼を喪うかと思った。  そんな事を認めるわけにはいかなかったけれど、恐かった。  彼が優しい目で笑いながら涙を拭いてくれる。 「興奮しているね」 「あなたの妻になるのよ……!」 「もうなってるさ。手続きが追いついていないだけだ」 「すみませんが、ダッシュウッド博士」  ヘールズ所長が片手を立てて割って入った。 「一応、建物から避難したほうがよろしいかと。レディ・ラモーナ! レディ・ラモーナ、安全のためです。もちろん心から祝福していますとも」 「……」  一瞬だけ理解が遅れた。  私は瞬きで涙を散らし、ヘールズ所長に何度も頷いて答えた。  彼に肩を抱かれ、彼に腕を回して、また支え合って急いで歩く。  そんな私たちを左右から挟んで支えてくれる人たちがいた。  私たちは燃え盛る図書館を避け、安全のためにできるだけ道のほうへ向かった。  ついに研究所が爆発した。  すべて吹き飛んだわけではなく、一階の一室が塵となっていた。それでも研究所は崩落しなかった。私たちは皆、呆然と見つめていた。  父と会えたのは夜も更けた頃で、私は彼の屋敷の、彼のベッドの脇に座っていた。  医師から足とあばらと鎖骨の骨折を言い渡された彼は、重症ではあったものの奇跡的にほとんど火傷を負っていなかった。  血相を変えて飛び込んで来た父は、無傷だった。 「ああ、ラモーナ……!」 「お父様」  父に抱きしめられ、互いに見つめあい無事を確認する。 「ラモーナに命を救われました」  ベッドから彼が言った。 「お父様。お話があるの」 「……なんだい?」  彼の手前、父も涙をこらえている。  父は母を亡くし、私を深く深く愛して生きてきた人だ。  父の気持ちはわかっていた。 「明日、朝いちばんに裁判所へ行って結婚します」 「……ああ、行っておいで」  父はまた、私を抱きしめた。  そして私たちは、翌朝、判事と証人の前で永遠の愛を誓った。  彼が杖をつき腕を吊っていたので、私が背伸びをしてキスをした。  教会で結婚式をあげたのは、それから3ヶ月後の事。  順番が前後してしまったけれど、神様は祝福してくれると誰もが言ってくれたし、私もそう信じる事ができた。  一生に一度。  ただひとり。  運命の恋だったから。                              (本編・終)                      (次回・番外編パンジー視点)
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